樽前山麓を源としてウトナイ湖を経由して太平洋に注ぐ勇払川。下流域の湿原地帯で川が伏流となり突然消える所があるなど何かと面白い川です。
この川の上流に滝があるということは少しアウトドアに興味がある人なら知っていると思います。
一つめは「七条大滝」。
3つの滝の中では最大です。最近はアウトドア系のガイドブックにも載るようになったので知っている人も多いのではないのでしょうか。
この滝は勇払川の支流?である丸山川に位置します。丸山川が支流になるのかどうかは調べてもよくわかりませんでしたが国土地理院の1/25000地図には丸山川と記載されています。
苫小牧から国道276号線を北上して支笏湖に向かう途中、丸山付近で大滝・喜茂別方面とのT字路があります。このすぐそばに国道の下を土管でくぐり抜けて流れている川が丸山川です。ここからおよそ直線距離で1.3㎞下流に七条大滝があります。
標識や滝への降り口も整備されていて迷う心配もないので初心者でも安心です。また催行日限定ですが支笏湖ビジターセンターで冬季スノーシューウォーキングツアーも行われています。
二つめは「丸山遠見の滝」です。
勇払川本流にある滝です。ここはガイドブック等には一切掲載されていませんし整備もされていません。特に冬季に訪れる人はほとんどいませんのでルートファインディングできる人でなければ無理でしょう。地図読みとコンパスが扱える人でなければお勧めできません。
三つめは「勇振の滝」です。
勇払川の支流である勇振川にある滝です。
丸山遠見の滝と同様ですがここは夏でも訪れる人はいません。更には見つけることさえも困難な滝です。
地図とコンパスがきちんと読めないと原生林の中で確実に方向がわからなくなり道を見失ってしまいます。
まさしく幻の滝です。
今回から誕生した新ジャンル”それが見たい!”では初回、勇払川3つの滝を見るアドベンチャーを紹介します。
しかし残念ながら今回見ることができたのは七条大滝のみ。自然の猛威に断腸の思いで撤退せざるを得ませんでした。

朝9時。
天気の良い冷え込んだ朝、店の前に集合したI、K氏2名とともに七条大滝入口となる第一縦断林道ゲート前に車で移動しました。
予定ではゲート前広場に車を駐車する予定でしたが2~3日前に降った大雪のため進入不能。やむを得ず50mほど先にあるパーキングエリアに車を停めることにしました。
今回は積雪が多いことからスノーシューを使って滝までハイクすることにしました。
ゲートからは新しいトレースが林道の奥へ続き先行者の存在を示していました。
23~24年前に一度滝を見たことがあるのですが道はもう覚えていません。きちんと調べてきたので迷う心配はないでしょう。
青空の下、スノーシューで新雪を踏みしめて歩く快感!
それはそれは気持ちの良いウォーキングです。
この日は冬型の気圧配置で西風が強く支笏湖の湖面に白波が立つほどだったのですが、樹林帯の中は風を遮ってくれるため無風です。
野生動物の気配は全くないのですが、純白のバージンスノーには鹿や野ウサギの足跡がたくさんあり生命に満ち溢れていることがわかります。
七条大滝に向かって楽しくウォーキングすることができました。
国道(起点)から約1.5㎞で鳥柵舞林道との分岐点です。
この林道をまっすぐ進むと千歳市藤の沢に抜けることができます。
雪をかぶったトドマツがまるでクリスマスツリーのようにきれいでした。
休憩していると後ろから1人ハイカーが追い付いてきました。
七条大滝の写真を撮りに来たそうです。
見た目外国人?かなという感じでした。
七条大滝へはこの分岐を右に進みます。
起点から約2.3キロ㎞で北5条林道との分岐です。
この辺で少し風が出てきて樹木から雪が舞い落ちてきました。
滝へはこのまま第一縦断林道を進みます。
起点から2.4㎞で滝への分岐点です。
小さいですがルート右側に立派な案内標識がありました。
昔は標識なんてものがなかったので滝への進入ルートがわからず探し回った記憶があります。
この標識が雪で埋まらない限り行き過ぎることはないでしょう。
起点より2.6㎞で滝への降り口に着きます。
急斜面を降りるのですが手すり付きの遊歩道が整備されているので安全です。
雪面が固くなっていてとても滑るのですが僕のスノーシューはクランポン付き、しかもフレーム全体にギザギザのエッジが付いているのでそのまま下降できます。
I氏とK氏はそれがないためにスノーシューをはずしてツボ足で下降しました。
谷の深さは40mほど。
スリップに注意しながらゆっくり降りました。(滑っても川まで落ちる心配はありません。)
起点より2.7㎞、七条大滝到着です。
昔の記憶ではもっと下流に降りて川を登ったような気がします。
一番下に追い抜いて行ったカメラマンが陣取っていたので一段上から撮影しました。
落差16m、勇払川の3つの滝では最大です。
時期が少し早かったのか氷が少ない感じですがやはり冬に見る七条大滝は素晴らしいと思います。
ちなみに滝の名前は1980年頃、付近にある南7条林道に因んで営林署の職員がつけたそうです。

落ち口のすぐ下流に七条大滝と書いた木製の看板が半分雪に埋まっていました。
本格的に凍る1月に来るともっと迫力があることでしょう!
写真を撮りながら20分ほど滞在して引き返しました。
帰路でのハプニング!
実はK氏が履いているのはスノーシューではありません。
プラスチック製の安くて小さなカンジキなのです。
積雪が少ない状態なら何も問題は無いのですが・・・
GPSトラックでみるとわかりますが帰り道、もしかしたら近道かもしれないと思い冒険心から林道を外れ別のトレースを追ってみることにしました。
樹林帯の中なのでもしもを考え途中途中でコンパスを合わせながら進んだのですがだんだんおかしな方向へと曲がっていくトレース。
なんと15分も進むと元の林道へ戻ってしまいました。出たところは進入地点から150mほどの所です。
ガッカリだったのですがそれより大変な事態に!
カンジキのK氏、数歩ごとに股下まで雪を踏み抜きその度に転倒。体力をガッポリ消耗して倒れ込んでしまいました。
休み休みなんとか歩くのですが一向に前に進みません。やっと元の林道に復帰した時には足が攣る寸前でした。
この後、体力を消耗したK氏は何回も倒れ込みながらやっとゲートまでたどり着きました。
最後ゲート前で記念撮影。
三脚を持っていかなかったので看板にカメラを置いて撮影しました。
歩いた距離は6㎞ほどですが、天気が良かったので気持ちの良い探索ができました。
この後、昼食にI氏特製のメチャうまカレーライスを食べて勇払川3つの滝の2番目「丸山遠見の滝」に挑んだのですが・・・
あと200mの壁が厳しかった!
それはまた後日に。

追記
北海道を広範囲に歩き調査した幕末の探検家、松浦武四郎は皆さんも知っていると思います。その記録は日誌の形で残されていますがその中の「夕張日誌」にこの滝が登場します。
安政4年、松浦武四郎は千歳市鳥柵舞から千歳川を遡るように支笏湖方面に進み、途中丸山付近を経て樽前山麓を通り白老に抜けるための調査を行いました。
その時に丸山付近で発見したのが七条大滝だと言われています。
日誌に滝のスケッチなど詳しく書き記し、アイヌ語で「ユウフのソウ」と呼ばれていたため「勇振の滝」と命名しました。
ところがこれが後に大きな議論を生むことになりました。
1990年に「勇払川滝の名前を考える会」が発足して松浦武四郎がたどった足跡を詳しく調査しました。そして勇払川3番目の滝(現支流勇振川)をユウフのソウ、つまり武四郎が名付けた勇振の滝だと結論付けました。
しかしこれに対し疑問を抱く研究者もいました。
武四郎の踏査ルートから大きく外れている上、夕張日誌に描かれているスケッチとは全く似ていないというのが理由でした。
そこで1997年に苫小牧郷土文化研究会が再度調査行なうことになりました。
そして幾度かの調査の後、最上流部にある現七条大滝が武四郎のスケッチしたユウフのソウつまり勇振の滝であると結論付けることになり今に至っています。
現在では勇払川支流である勇振川上流にある滝が勇振の滝と呼ばれています。
それにしても遥か昔、松浦武四郎が道なき道を踏破して千歳から白老まで行ったという事実が凄いですね。
当時は熊もたくさんいたでしょうから。